トガビト反省会 

トガビト反省会


和馬
「ここの司会は……えー、本編・断片集通して比較的イノセントだった人、とのことだが」

みこと
「……」

征史郎
「……」

亮也
「……」

七緒
「……」

エレナ
「……」

千鶴
「……」


「……」


「……」

彩音
「……」

和馬
「全滅じゃねーか!!」

くるみ
「くるみは?」

和馬
「あー、まあくるみは大丈夫だよな。誰も傷つけてねーし」

みこと
「あ、あと彩音先輩は? 過去に色々あったけど基本自分は悪くないよ!」

彩音
「ゾンダゴドバダイ……ディブンバデョーヤボグダラゼデジバッダンダイ……」

和馬
「ああダメだ、言語が既にこの世の物じゃない」

くるみ
「……ならくるみがひとりでやるっ! みんなそこに正座して」

七緒
「なっ……!」

エレナ
「てめーちびくるみ、ナマいってんじゃねーぞ!!」

くるみ
「文句があったらこどもケータイで通報する」

みこと
「……!?」

七緒
「!!」

エレナ
「……!」

千鶴
「……♪」


「……」

くるみ
「あと防犯ベルで人を呼ぶ」

亮也
「……」


「……」

征史郎
「……だそうだぞ、早く逃げとけ顔面犯罪者」

和馬
「俺が逮捕決定かよ! まあいいや……ほれ、お前ら正座だ正座。あー彩音先輩はその辺で死んだように寝てていいぜ」

彩音
「ぐべべべべ……」





1.ことばのもんだい!




くるみ
「じゃあ、さっそくやるよっ」

一同
(口々にやる気のなさげな呟き)

くるみ
「こえがちいさーーーい!!」

エレナ
「ちょーしにのってんぜカズっち」

和馬
「我慢しろ。今の奴には世論と国家権力がバックについてる」

一同
「「「へーい……」」」

くるみ
「まったく、みんな高校生にもなって小学生から説教とか情けなくない?」

七緒
「情けないというか腹が立つなぁ……」


「僕、小学生……」

くるみ
「悠はこの中で一番最初の罪状が重いじゃん!」


「……えへ」

くるみ
「可愛い顔してもダメ! とにかく始めるから」

一同
「「「へーい……」」」

くるみ
「そのいち! 『トガビト』なんてことば、ない!!」

和馬
「――あ?」

七緒
「何を言ってるんだこのお子様は」


「咎(とが)めるの『咎』、あやまちや失敗、罪の意に、人をつけて、咎人。何か間違ってます?」

くるみ
「だから! それは『とがにん』って読むの!!」

一同
「「「……」」」

和馬
「征史郎、マジか」

征史郎
「マジだな。どの辞書にも『とがにん』で乗ってる」

七緒
「『とが』は訓読みで『ニン』は音読みでしょ! 普通訓読みでそろえてとがびとって読むでしょうよ!!」

千鶴
「湯桶(ゆトウ)読みってやつね♪」


「じゃあ例のアレはとがケンですか! どこのタレントですか!」


「お姉ちゃん、結構アウト……」

くるみ
「まあネットとかでは『トガビト』って読みがすごく広がっちゃってるけどさ、『トガビトノセンリツ』のせいでまたうそが広がったかもしれないんだから、謝って」

征史郎
「くるみ、それは違うぞ」

くるみ
「なんで?」

征史郎
「言葉というのは生き物だからな。ある言葉が生まれて使われ始めてしまえば、誰かにそれを止めることはできない。言論が自由な国だからこそ、言葉は年を経るごとに姿を変えていくんだ」

くるみ
「そしたらみんなエレナみたいになっちゃうかもしれないじゃん」

エレナ
「っスかーなんスかーべーつにいーじゃねっスか通じりゃ」

七緒
「まあ僕も日本語の格調が年ごとに下がっていくことには危機感を覚えてますが」

亮也
「かと言って、どうなるものでもないよね」

くるみ
「どうすればいいの……?」

和馬
「……なんつーか、知ってりゃいいんだよ。知らなきゃそんとき覚えりゃいい」

くるみ
「そうなの?」

和馬
「ああ。教養なんて大っぴらにひけらかすもんじゃねーし、教養がねーことを貶めるために使うようなもんでもねー」

和馬
「たださり気なく使って、分かる奴がふと気付けばいいってだけのもんだ」

和馬
「だからただ知っとけ。それでいい」

くるみ
「……う、うん、わかった……」

みこと
「……なんだかアレだよね。こういうの聞くと、和馬くんの育ちの良さを感じるよ」

征史郎
「エセ不良の本領発揮である。しかしさっきの論はもっともだが、この場で言い訳することは教養の使い方にもとらないか?」

みこと
「それだけど、なんか作者も書いてる途中で知ったらしいよ。とがにんだと語感が悪いからそのままにしたそうだけど」

七緒
「……要するに、知りませんでしたごめんなさいってことですね」

くるみ
「……ええと、とにかく次いくから!」





2.ぐろすぎ!!




くるみ
「前の作品で散々言われたのになんでぐろいの強化したの!?」

亮也
「ごめんなさい」

みこと
「ごめんなさい」


「ごめんなさい」

七緒
「ごめんなさい」

エレナ
「悪かったっスよ」

和馬
「すんません」

千鶴
「ごめんね♪」

征史郎
「遺憾である……ううむ、今回はあまりSF的に飛躍しないようにしたつもりだったようだがな」

くるみ
「どういうことなの」

征史郎
「人間の死体はグロいものだってことだ。グロくない死体を作ろうとすれば、謎の薬剤とか冷凍保存とかいろんなものが必要になるだろう。そこはリアルさを確保したかった、とのことだ」

くるみ
「……それは、くるみたちの目を通して見える現実はそうかもだけど、文にしなきゃいいじゃん」

征史郎
「そりゃ視点キャラである和馬が悪趣味だからしょうがない」

和馬
「お前を悪趣味な目に合わす」

征史郎
「おいやめろ……ちなみに、作者自身はプレイヤーが生々しい死を噛みしめ、悲しめるように書いたつもりだった……と言ってもいるようだ。また、忌避すべきものである『死』をきちんと書くことが大事だと考えていたようでもある」

くるみ
「……それがただのぐろになってたら失敗じゃん!」

和馬
「なあ、実際ここに正座すべきなのは、あの野郎じゃねーのか」

征史郎
「これが二次元の悲哀というやつだ。皆様、作者の腕が至らず申し訳ない」





3.えろすぎ!!




くるみ
「え、え、えっちすぎるってコメント来てるんですけど」

和馬
「先生、犯人はこいつです」

七緒
「はああああ!? 何言ってるんですか! 僕はいつもセクハラの被害者でしょうが!!」

和馬
「ヤローはそーやってドツキ合うもんなんだよ! 黙って悶えてんのはヘンタイだろーがヘンターイ!!」


「えー、一応注意を、一連の流れはあくまでフィクションであり実際のセクシャリティー等に対してどうこう言うものではありませんので、各種団体の皆様は斧持って襲ってこないで下さい」

亮也
「あはは、斧って」

征史郎
「しかし待ってほしい。本作がエロいというが、別に本編でモロなシーンが出るわけではない。具体的にはどこが問題なんだ?」

和馬
「カンチョーじゃね」

征史郎
「あれは未遂だろう」

みこと
「過去話じゃないかな……」


「ま、まあ、いろいろヘビーな人もいましたわな」

七緒
「ごほんごほん! まあ一応、『トガビトノセンリツ』の表現は問題ない範囲だと思いますよ……日本なら」

和馬
「日本なら?」

七緒
「ええ。日本はかなり性表現について寛容ですからね。マンガとかのパンチラなんて結構多くの国でNGになりますし、セクシーな服だけでもアウトな国もあるわけです。アメリカなんかも厳しいですよ」


「へー。アメリカなんてその辺おおらかなイメージがありましたが」

七緒
「子供が触れる可能性のあるコンテンツからは、怖いくらい徹底的にセクシーさや犯罪表現が抜かれたりもするよ」

七緒
「ちなみに、ゲームについてはまだはっきり分かっていない部分も多いのですが、どうやらゲームが売られるマーケットの国籍が非常に重要なようです」

征史郎
「ふむ?」

七緒
「スマートフォンとかだと、大手のマーケットは国外のが多いですからね。その場合、その国ごとにタブーの深度は変わると考えて差支えないでしょう。結論としては、よその国だと『トガビト』は有害コンテンツ扱いされる可能性はあります。まあエロ要素云々の前に人殺しゲームが題材ですからね」

征史郎
「ふむふむ、なるほど……」

征史郎
「……さて、充分に伏線は貼ったところで次に言ってくれくるみ」

くるみ
「え、えええ、どういうことなの?!」

七緒
「っていうかセクハラについて僕にも文句を言わせろ!! 竹井先輩は相応の謝罪と埋め合わせと絶対服従をしてください!!」

和馬
「どさくさまぎれに何要求してやがんだコラ!」





4.ふつーじゃなさすぎ!!




くるみ
「えーと、他にも『もっところしあえ』とか『らすぼすひっこめ』とかもあるみたいだけど、さっきのあやねちゃんのとかぶるし、最初のはふぁ×くだから却下ね」

七緒
「汚い言葉つかうんじゃない!」


「うーむ順調に感化されてってますねえ」

みこと
「和馬くん、もっと見本にならないと!」

和馬
「俺かよ」

くるみ
「うるさーい!! これが最後だけど! みんな、ちょっとふつーじゃなさすぎ!」

亮也
「どの辺がだい?」

くるみ
「性格とか! 特技とか! それになにより家庭の事情!!」

千鶴
「あらら、くるみちゃんちだって複雑じゃない」

くるみ
「うちくらいのはザラだもん」

和馬
「うーん」

彩音
「ぬーん」

征史郎
「これが子どもなりの世界の狭さってやつか」

くるみ
「……え、え?」

和馬
「あのな、これはしっかり言っとくが、俺らくれーの連中そこらにゴロゴロしてっからな」

くるみ
「……ほんきで言ってるの?」

和馬
「ああ。言っとくがノンフィクションの話な」

征史郎
「……一応補足しておくが、ある種の天才だのデスゲーム主催者だの重犯罪者だの怪異だの番長だのがその辺にいるって意味じゃない。フィクションの産物だ」

くるみ
「わかってるわよ!」

征史郎
「しかしながら、大人になって周りを見渡してみれば、問題のある家庭などありふれていることに気付くだろう。今ある自分の常識が、自己本位な実家の光景や、ステレオタイプなメディア産の偶像だってことを知ることになる」

くるみ
「……」

七緒
「そして振り返ってみれば、自分の家の光景だってどこも『普通』じゃなかったと気付くんです。普通の方法で対処できない問題がいくらでも出てきて、頭なり体なりを使って……それを乗り越えてようやく、社会に出たと言えるのかもしれませんね」

エレナ
「……もしかしてっスけど、ちょい前言われてた『生きる力』ってそーゆーんじゃね?」

亮也
「言えてるかもしれないな。自分を無意識に守ってくれた殻が無理矢理破られて、ロクでもない社会に生まれ落ちて、その後自分を変え、生きていくために必要な力」

彩音
「……そんなん学校で教えられるもんだろーか……」


「学校で学ぶことは多いはずです。しかし、血の力といいますか、家族・一族の伝える力というものも大きいと思いますね」

千鶴
「『トガビト』が暗に伝えたいのは、そういうことなのかしら♪」

征史郎
「家族の力の、反面教師というわけだな」


「やだな、大人になるの」

亮也
「それでも、自分の足で外を歩くのはいいものだよ」


「ホント?」

亮也
「ああ、もちろん」

征史郎
「――以上、社会派ノベルドキュメンタリー『トガビト討論・日本の明日はどっちだ』をお送りしました」

くるみ&和馬
「「コーナー変わってるっ!!!」」

トガビト反省会 


©2012 KEMCO